SocaleHaus

ミーティングスペースを兼ねたダイニング。テーブルはデンマーク・FRITZ HANSENのスーパー楕円テーブル。

キッチンカウンターはステンレスのオリジナル。左側はパントリー。

洗面器はドイツ・DURAVITのスタルク3、ドアハンドルはドイツ・FSBのノブ。

バスタブはゆったりと足を伸ばせるドイツ・KALDEWEIの洋バスにドイツ・GROHEのオーバーヘッドシャワーを組み合わせた。

> ひとつながりの家

 

アトリエと住居を兼ねたスペースをつくりたいと思い立ち、改装ができる中古のマンションを探し始めたところからこのプロジェクトはスタートしました。いくつかの物件をみましたが、なかなか条件に合う物件に出会えない中、たまたま戸建てのリノベーションをみる機会がありました。マンションのような制限もなく構造の柱以外は自由にできて、窓が多く自然光もたっぷり入る。そんな魅力を感じて戸建ての物件を探し始めました。仕事の都合上、都内のどこにでも行きやすく、地方にもアクセスがしやすい場所。そんなことを思いながら出会ったのがこの千駄木の物件です。銭湯が近所にいくつもあり、山手線の内側とは思えない昔ながらの街並でしたが、地下鉄3駅、少し歩くが山手線も徒歩圏内と絶好の立地でした。建物は普通の人なら敬遠するような朱色の外観で、ずっと買い手がつかなかったのか物件価格も手頃。ここなら将来的には手狭になりそうだけど、家賃を払い続けるのと同じ費用で、土地、建物、諸費用、リノベーションの費用まで賄うことができる。賃貸と比べると、20年後にはもれなく土地がついてくる。そこで、あまり将来のことを考え過ぎず、10年後ぐらいまでを想定して計画を進めました。

 

建物全体をひとつながりの空間として、個室はバスルームだけに絞りました。1階はワークスペースを中心に、キッチンやバスルームなどの水回りを木造の柱のグリッドに合わせてレイアウトしました。床はイタリアの磁器タイルをダイニングからバスルームまで段差をつけずに仕上げました。冬はひやっとしますが、夏は快適です。壁は塗装、天井はスケルトンにして、一部を二段階で天井を下げて、スケルトンにした部分の天井高を強調するような空間構成にしました。天井をスケルトンにすることで、梁などの木造の構造があらわれ、懐かしさと新しさがミックスされた空間となりました。もともと2部屋に分かれていた2階も壁をつくらずに、天井を限界まで上げて梁を見せて一つの空間としました。床のフローリングは無垢のオーク材で小さな体育館みたいな空間です。将来はロフトをつくったりしながら、子供の成長に合わせた空間にしていきたいと思っています。バスルームは予算を考えるとユニットバスにしてしまうところですが、ミニマムなスペースに設備も最小限に絞ることで、在来工法にすることができました。壁は白く艶のある磁器タイルに、ゆったりと足を伸ばせる洋バスとオーバーヘッドシャワーを組み合わせ、ホテルのバスルームのようなリラックスできる設備を整えています。最小限の設備だからこそ、シンプルな機能で飽きずにずっと使えるものを組み合わせました。特に毎日使うドアノブや水栓は、10年後に飽きてしまうものではなく、長く寄りそえる、本物だけを身の回りに置きたいと思い、チェアを選ぶように一つひとつ丁寧に選んでいます。つねに自分に合ったスタイルで改装をしながら、どうしようもなくなったら引っ越してしまえばいい。10年も家賃を払い続けたと思えば、十分に元はとれる。どうなるか分からない何十年も先を想像していろいろと盛り込まないことで、住まいをもっと自由に考えることができる。このようなスタイルもこれからの時代に合ったひとつの住まい方のような気がしています。

 

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SocaleHaus|ソケールハウス

 

Website|socale.jp

Category|住宅

Address|東京都文京区千駄木5-35-6

Open|2012年8月9日

Lighting Adviser|ヤマギワ 副島佳子

Construction|アークオフィス 小田邊邦夫

Photo|エム・ピー・オー 佐久間新